雇用統計を受けたドル買いは本物か?
注目されていた雇用統計ですが、
・失業率:6.1%(予想:6.3%、5月:6.3%)
・非農業部門雇用者数の増減:前月比+28.8万人(予想:+21.2万人、5月:+22.4万人)
・平均時給:24.45ドル(5月:24.39ドル)
という結果でした。
前日のADPレポートで民間部門雇用者数の増減が+28.1万人(予想:+20.5万人、5月:+17.9万人)となったことで、
予想より強めの数値を見込む向きが増えていましたが、さらにそれを上回る結果でした。
そもそもADPレポートってなに?というところから…
ADPは給与計算などの人事関連業務の大手代行会社で「Automatic Data Processing, Inc.」のことで、
同社の約50万社のクライアント、2300万人以上の給与計算データを基に、
Macroeconomic Advisers, LLC(マクロエコノミック・アドバイザーズ)社が計算したのがADPレポートです。
ADPの民間部門雇用者数の増減と労働省の非農業部門雇用者数との違いは、
ADPは、同社のクライアントを基に計算し、民間に限られたものであることです。
したがって、政府部門の数値は含まれていません。
ADPレポートは通常雇用統計の2日前に発表され、米労働省の雇用統計を占う参考程度の数値との見方が大勢です。
しかしながら、今回は大幅増加となっていたこともあり、2日には株高・債券売り(金利上昇)・ドル買いを演出していました。
個人的には、雇用統計の前日にかなり強い数値を織り込んだことで、
+20万人程度ではドルが売られるのではないかとさえ考えていました。
それに今回の雇用統計発表時の値動きは、
大抵は発表前のレートを挟んで、一旦は上下に振れるのに今回はそれもなく、
ドル円でいえば102円台に素直に乗せて、そのままという形になりました。
理由はいくつか考えられます。
1.当日は株式市場など短縮取引、4日が休みということで、ドルの売り方が耐えることなく、素直に買い戻した
2.同時刻のECB総裁の会見がハト派的なものだった
3.本当にドルが強いと考える参加者が多かった
などです。
1、テクニカルな問題で、きちんとストップが置かれていた、NYカットのオプションのオーダーの存在などで想像できます。
2、ECB総裁の会見はハト派的で、サプライズはなく、インフレ見通しが変われば、量的緩和を実施する用意があるとの考えをあらためて表明しました。
マーケットでは米10年債利回りが一時2.66%まで上昇、独10年債利回りは1.29%でほぼ横ばい。
利回り格差は一時、15年ぶりに137bpにまで拡大しました。
対ユーロでのドルの金利面での優位性が明白になり、ドルは対円では30pips程度の上昇、対ユーロでは60pipsの上昇を見せました。
問題の3ですが、乱暴に言い換えると
「利上げ前倒しの可能性の上昇を予想する向きが増えた」ということでしょうか。
このまま労働環境の改善が進み、景気回復が加速すれば、インフレや資産バブルなど低金利政策の副作用が表面化する恐れもあります。
ただ、雇用の伸びと比較して賃金の上昇は小幅にとどまっており、個人消費の回復にはまだ時間が必要との見方が多いのが実態です。
つまり、利上げの前倒しにはつながらないということでしょうか。
これは利上げ時期に限定した見方であり、投資環境にとっては非常に良い状態と言えます。
中長期的に金利はしばらく引き上げられない≒株式の支援材料、
その結果、債券が売られるが、欧米間の金利差もあり、債券は下げると買われる、金利上昇・株高でドルが買われるという図式です。
ただし、このままダウが高値を更新し続けるとは、考えにくいですね。
今週は比較的米国初の材料が少なく、節目の17000ドルを突破し、やれやれの利益確定売りが誘われそうです。
したがって、短期サイクルでは株式の下落≒債券買い=金利低下=ドル安ということにもなりそうです。
あと、ドルの重石になるのは材料がない時に意識される地政学的リスクですね。
特に情勢に変化がなくても、理由づけに利用されますので、要注意です。