米国債と金融市場
先週の相場を振り返ると同時に今週の相場を考えてみましょう。
週初は米国株も買われて始まったものの、米国債への資金シフトが盛んになりました。
ダウが14・15日と100ドル超の下落を見せると、10年債は15日に2.50%割れまで買われ、昨年の10月以来の水準を記録。
週末16日は、ダウが小反発、10年債は売られ、2.50%台を回復しました。
それぞれ、経済指標とか理由はあるのですが、端的に言ってしまえば、週末の反対売買が主因だと思います。
ここでちょっと考えてみましょう。
債券のトレードを行う投資家には2パターンあります。
ひとつは、債券投資の本筋である、利回り狙い。
償還を受けて、金利を受け取る投資家。
もうひとつは、債券価格の上下で利ザヤを得る投資家。
前者はそれ相応の期間資金が凍結されるため、しっかりとした資金計画を経てた上での投資行動であり、
資金が潤沢な法人等が多く、場合によっては国もこれに該当します。
今でこそ、政府・日銀などの介入はほとんど見られませんが、
数年前までは円売り・ドル買い介入が行われ、買ったドルを米国債に購入に使っていました。
後者の利ザヤを狙う投資と言うのは、株式投資と同様に価格の上下動で利益を狙うものです。
米国が2015年のいつになるかは不明ですが、利上げに踏み切る可能性が高くても、
もっともっと価格が上昇する=利回りが低下するとの考えての投資です。
12日には2.60%台だったものが、2.50%割れまで買われたわけですから、16日は転売されて当然でしょう。
短期勝負のトレードなわけですから、含み益があれば、土日の2日間になにがあるかわからない以上、
利益確定の売り=利回り上昇となったわけです。
実はもうひとつ債券トレードを行う投資家がいます。
資金の退避先として、債券市場へ参入してくる向きです。
株式市場があまりぱっとしない、ウクライナ問題がキナ臭いなど、今は米国債を買う理由がいっぱいありますからね。
このような投資家たちが入り乱れて、先週は米国債への資金シフトが盛んになったわけです。
さて、今週のマーケットですが、
20・21日には日銀金融政策決定会、21日終了後には黒田日銀総裁の会見があります。
金融政策自体には変更はないとの予想が大勢です。
前回の会見以降、比較的経済見通しに強気な発言が見られ、追加緩和観測が後退していますが、
消費税増税後の景気動向をどう見ているのかが注目されます。
ドラギECB総裁が、
「為替相場は政策目標ではない。しかし物価安定目標の安定への深刻な懸念となっており、
これに対処する必要がある」
と発言しており、ECBが行動を起こせば、日本も追加緩和しやすくなってきます。
実際に追加緩和するかどうかはともかく、状況次第では、円高に対するけん制発言などは十分可能性がありそうです。
21日には、4月29-30日のFOMC議事録が公表されます。
低金利維持の方針を決めた3月と比較して、どのような議論がなされたか、
微妙なニュアンスをくみ取ってマーケットが動くことにもなりそうです。
問題のウクライナ情勢ですが、
オバマ大統領とメルケル首相が25日のウクライナ大統領選までに危機解決の対応策を示さなければ、
経済制裁の追加を行うとしたタイムリミットが迫っています。
ということは、今週中になんらかの動きがあるかもしれません。
今週も日々の経済指標以外にも、マーケットの波乱要因となるものがあり、神経質な展開となりそうです。
不確定要素が多いため、
また米国債券買い(=米金利低下≒円買い材料)が活況となれば、
ドル円も下値を探る展開になるかも知れませんね。