意外だった欧米金融当局者発言
先週はサプライズなし予想が大勢だったイエレンFRB議長の議会証言、ECB理事会ともに意外な結果となりました。
まずは、イエレンFRB議長の上下両院経済合同委員会での証言
「高い水準での緩和は引き続き正当化される」
「連邦準備制度理事会(FRB)はかなりの期間低金利を維持」
「見通しが維持されれば慎重なペースでの縮小を継続」
「QE終了後も金利正常化には著しい時間がかかる」
「最初の利上げはFRBの責務達成度次第」
「利上げには具体的な時期を設定していない」
「2%以下のインフレが長期化することはリスクを生む可能性も」
「労働市場は改善も満足する水準にはほど遠い」
「FRBは失業率だけよりも他の指標を監視する必要」
「労働市場に著しいたるみが見られる」
「労働参加率が安定したことは労働市場のたるみが緩和したことを意味する可能性も」
「長期失業者やパートタイマーは過去最高水準にある」
「遅い賃金の伸びは著しい停滞を示す」
「住宅市場の活動には引き続き失望」
労働市場と住宅市場に関して、満足していないことが強調される内容です。
労働市場については、引き続き賃金や長期失業者については懸念を示しています。
ただ、「たるみ」(労働市場の需給バランス)については、幾分明るい感じを受けますね。
労働市場に関しては、注視すると同時に再三不満を見せてましたが、
住宅市場についても言及しているのが、目新しいです。
FRBが長期金利を引き下げたにも拘わらず、という苛立ちがうかがえます。
これらの発言を機に、米国債から株式にまた投資マネーが流れてきており、週後半はダウ3日続伸となってます。
次にドラギECB総裁の発言です。
「ECBは必要であれば6月に行動を」
「為替リスク、地政学的リスクを綿密に監視へ」
「ECBは非伝統的な手段を検討する準備はできている」
「政策金利は長期にわたり現行水準かそれ以下」
「経済のリスクは引き続き下向き」
「下方リスクには為替、弱い世界の需要、地政学的リスクが含まれる」
「低インフレが長期化するに連れ、リスクは拡大」
「インフレ見通しの上下リスクは限定的」
「インフレは15年に向けて徐々に上昇へ」
「ユーロのインフレへの影響は重要な懸念を引き起こす」
「為替相場は政策目標ではない」
「為替相場に関する懸念に対処する必要」
政策金利の据え置きが発表されると一旦は、ユーロが買われましたが、
会見で上記のような発言があり、
ユーロ高をけん制する発言と「必要であれば6月に行動」という追加緩和を匂わせたことで、
ユーロが大きく売られる展開となりました。
整理すると、
ドル買い要因
FRB議長発言「高い水準での緩和は引き続き正当化される」
ドル売り要因
FRB議長発言「労働市場は改善も満足する水準にはほど遠い」
FRB議長発言「住宅市場の活動には引き続き失望」
ユーロ買い要因
政策金利据え置き
ユーロ売り要因
ECB総裁発言「必要であれば、6月に行動」(≒追加緩和示唆)
これらを受けて、外為市場で
ユーロドルは1.34手前から1.37台半ばまでドルが買われ、
ドル円は101.40台で4日間止まってます。
ドルはなぜ対円で買われていないのか?
これには、ユーロの弱さというか先安感があるからでしょう。
日本は黒田総裁が強気な発言をし、利上げの可能性があり、
ユーロは金融緩和もしくはゼロ金利などの背景ができたからですよね。
今週は、
11日の親ロシア派によるドネツク州とルガンスク州の2つの州で住民投票
15日にイエレンFRB議長が商務省商工会議所で講演
同日5月のNAHB住宅市場指数
16日4月住宅着工件数、建設許可件数
などが注目材料。
ウクライナ東南部での住民投票では、ロシアによる軍事介入の可能性もあり、緊張感が高まりつつあります。
ロシアは大統領選で親欧米派が勝った場合には、6月より天然ガス供給をストップすると警告、
また、対米戦略として、米国がロシアの国家・金融機関の資産を凍結すれば、米国債を売却すると警告してます。
米指標では、イエレン議長が懸念している住宅関連指標が控えており、結果次第では金融緩和縮小ペースの鈍化、
利上げ時期の先送りも意識されることになります。
25日が迫るにしたがって、ウクライナ情勢の緊張が高まってます。
引き続き、金融情報だけでなく、世界情勢にも気を付けておくべきでしょう。