イエレン議長デビューのFOMCと雇用統計

読者様より、「もう少しマーケットに関する内容にしてほしい」
という声をいただき、こうしたご意見を踏まえた内容にしてみようかと思います。

今回は、先のFOMCについて
3月18-19日にイエレン議長のデビュー戦となるFOMCが開催された。

その場での2つの発言が、正当に評価されず、デビュー戦は失敗との声が聞かれた。

1.FOMC委員による政策金利予想と会見の乖離

・2015年末の政策金利について
昨年12月のFOMCでは10人の委員が0.75%以下にとどまると予想
今回のFOMCでその人数が6人に減少
1%になると予想した委員は12月の2人から、今回は5人に増加
2016年末時点の政策金利について
2%以上の水準を予想していた委員は12月の8人から、12人に増加

・ところがイエレン議長は、会見で…
FOMCの声明では「予測されるインフレ率が2%の長期的な目標より低くとどまり、長期的なインフレ期待が十分に抑制されたままとどまるなら、現行のFF金利の目標誘導レンジを資産購入が終了した後も相当な期間(consid erable period)維持することが適切」としていた。

記者会見でこの「相当な期間」とはどのくらいかと聞かれ、
「定義は難しいが、おそらく6カ月前後」と答えている。

ここで計算してみよう。

このまま債券購入額を毎回100億ドルずつ減額していくと、9月には150億ドルになる。
10月に一気に150億ドル減額すれば、ここでQEが終了。
仮に10月に100億ドル、12月に50億ドルとした場合でも年内にはQEが終わることになる。

これから6カ月であれば、遅くとも2015年半ばには利上げに踏み切る計算だ。

つまり、FOMC委員の予想よりかなり早い時期での利上げということになる。

同時に

2.完全なる雇用環境の改善

声明文の中で、金融政策の方向性を示す「フォワードガイダンス」について、
失業率6.5%の数値基準を撤廃した。
単に失業率というひとつの数値にこだわるのではなく、
複数の雇用指標、その他の経済指標を見て判断するというスタンスに切り替えた。

複数の雇用指標を見て、それら全般の改善が必要ということだ。
複数の雇用指標が、改善するというのはかなり難しく、
さらにその他の経済指標もとなれば…

これによって金融緩和政策を長く維持するというシグナルを発したのである。
しかし、当日のマーケットは「1」だけを受けて、ドルが買われ、ドル円は101.30円付近から一時102.70円手前まで押し上げた。

通常、金利政策だけでなく、
マーケットに「喝」を与えたいときには、不意打ちが効果的で、
それを止めるときには、市場に少しずつ織り込ませる
というのが、鉄則だ。

しかし、マーケットは、わかりやすい単純計算できる「1」だけを見て、議長自らの言葉を評価しなかった。
結果的に議長自ら、余計なインパクト与えてしまったのである。

ただ、すでに失業率6.5%は完全に視野に入っており、6.5%を下回った際に動き出さなければ、信用を失うことになる。
これを回避したというのも見逃せない。

イエレン議長は、実は「相当な期間」について具体的な数値6カ月と発言したのは、故意にではないのか?

もしそうなら、相当の役者だ!

ちゃんと「2」という逃げ道を用意してあるのだから。

招金猫的には、デビュー戦は失敗じゃない!という評価。

 

今週のメインイベントは、ECB理事会と米・雇用統計の発表。

米・失業率の6.5%には、特に意味もなくなり、やや焦点がぼやけるが、「完全なる雇用」の意味するものがなにか、がわかれば、今後の指針になるかもしれない。

また、雇用全体として、大寒波の影響が概ね消え、良い結果が見込まれている。
特に昨年12月で雇用保険の受給が失効した人たちが、寒波を終え、就業している時期でもあり、注目したい。

雇用統計の結果が良いと、
早期の利上げ観測の高まりは、
金利面でドル買いを促進、
利上げするほど米景気は好調との見方からの、株高・ドル高(円安)
反面、金利上昇による株価の下落、ドル安・円高

雇用統計の結果が悪いと、
早期の利上げ観測の後退は、
金利面でドル買いの減速、
米景気に対する懐疑的な見方からの、株安・ドル安(円高)
反面、金利上昇の先送りによる株価の上昇、ドル高・円安

結果が良くても悪くても、マーケットは玉虫色の反応を見せる。

これが、発表直後の乱高下へとつながる。

また、31日にはイエレン議長の発言もあるので、要注意!

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