アメリカの中東政策

不透明なイラク情勢が注目されていますので、
今回は「第二次大戦後のアメリカの中東政策」をテーマにしたいと思います。
なお、4期の分類は2014年4月3日放送の放送大学「現代の国際政治」を参考にしています。

中東情勢は、本来は宗教的なお話から説明しないと根本的に理解するのは難しいのですが、
今回はアメリカの立場からということで、割愛いたします。

アメリカの中東戦略は大きく以下の4つの期間に分けて、考えることができます。

1.冷戦期
2.冷戦後
3.9.11後
4.シェール革命後

まずは、冷戦期です。
この時期は、
・ソ連の封じ込め(中東への進出阻止)
・石油の確保
・イスラエルの安全保障
の3つの目標がありました。

石油を確保するために、反イスラエルであるアラブ諸国と仲良くする必要があり、
アラブ諸国は、武器が欲しいのでアメリカに武器を要求します。
アメリカは、武器を提供するとイスラエルに向けて使われる恐れがあるので、嫌がります。
するとアラブ諸国は、ソ連から武器を調達することになります。
このようにアメリカにとっては、ジレンマとなり、
結果的に、ソ連の封じ込めは極めて困難になりました。

次の冷戦後はソ連の封じ込めという目標がなくなり、残り2つの目標をバランスよく立ち回ることで、とりあえずそれほど大きな問題はありませんでした。

9.11後は、冷戦後の目標に加えて、
・テロ組織の壊滅
・大量破壊兵器の拡散防止
という難しい問題が加わります。
しかしながら、これは世界の警察としての大義名分が強化され、より一層中東への介入を強めることが可能となりました。

そして、シェール革命。
アメリカの国土のほぼ全域で、シェール層が確認され、石油や天然ガスなど100年分に相当する埋蔵量があると見られており、2020年頃には巨大資源国になるといわれるようになりました。
これで、中東からの石油確保の必要性が低下し、イスラエルの安全保障・テロ組織の壊滅・大量破壊兵器の拡散防止の3つが目標になりました。

今回のイラク情勢については、国交断絶中のイランとも協議をするなど異例な状況が起きています。
これには、アメリカ自身が派兵などが困難なことに加えて、2011年にイラクから米軍が撤退していることで情報を得るのが困難になっていることなどが要因です。
イランとの協議により、情報を得ること、場合によってはイランのイラク支援により、武装集団を鎮圧することなどが目的と見られており、さらにはイランのイラクへの過度な介入を牽制する意図があるようです。

中東情勢は歴史的な背景、宗教的な違い、さらには同じ宗教でも宗派の違い、そして石油という複雑な問題が絡み合っています。
アメリカにとっては、シェール革命により中東の石油への依存度は今後さらに低下することになります。
それでも中東にこだわるのは、第二次大戦以降、イスラエルの安全保障という目標が延々とあることに起因しています。
アメリカがなぜイスラエルにこだわるのかは、中東にあるのではなく、アメリカ国内の政治に原因があります。
これを書くとキリがないので、止めておきますが、今後の動向には引き続き注目しましょう。

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